lovelyな口笛

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「人間なんて」わたしが自分のこづかいではじめて手に入れたアルバムのタイトルだ。ませたガキで、隣町に同級生を引き連れて遊びに行き、年上の中学生にケンカを売ったりしていた小6の春に(いや小5の3月だ。)買ったと記憶している。まわりの誰もがガキにみえ、大人のすべてがつまらないものに思えたものだ。その頃からの似非ニヒリズムが未だわたしの骨肉に潜んでいるのだろうか。

次に買ったアルバムは「Dark Side Of The Moon」(邦題「狂気」:写真中)。Pink Floydの1973年発表の「傑作」とされるアルバムだ。アートで思索的な曲とマルチチャンネルがたしかに衝撃的だった。このときシド・バレットを知る。彼のソロアルバムやPink Floydの他のアルバムも飽きるほどきいたが、やはり「Piper At The Gates Of Dawn」(邦題「夜明けの口笛吹き」:写真下)が一番だった。
その後、様ざまな音楽に出会ったりしたけれど、「夜明けの口笛吹き」ほどわたしの胸をいっぱいにする音と言葉のざわめきを知らない。けっして「サイケ」などというつまらない形容でこのざわめきを説いてはならないだろう。少なくともわたしにとってはそうだろう。
シドの生みだしたざわめきは未だにわたしのなかで、厚い暗雲とときおり仄ひかる稲妻と気まぐれな驟雨とにかき消されんとしながらも湖水に騒ぐ無数のさざ波の先端を絶えることなく光らせている。このlovelyな口笛を彼は今も吹いているのだろうか。