2007-12-01から1ヶ月間の記事一覧

年のはてに

年のはてによめる はるみちのつらき 昨日といひけふとくらしてあすか川流れてはやき月日なりけり 『古今和歌集』巻第六 冬歌(角川文庫)より

リュミエールの微笑み

WOWOWでクリント・イーストウッド特集をしていて、放映されたほぼすべての作品を録画した。ほとんどが過去に何度もみた作品だったが、以前目にしてそれほどいいと思えなかった「バード」がとても素敵な作品だと気づいたことは何よりの発見だった。 妻の…

それはかぎりなく愛のさまに

映画はかぎりなく料理に似ている。 食材の吟味、たとえば旬の走りか盛りか、鮮度、色つや、大きさや太さ厚さの具合といったこと、まな板の上での細やかでいて厳しくもある判断、どこまでを切り捨てるか、どの厚さに太さ細さにするか、切れ目を入れるか入れな…

色白な指の上に

「おまえはおとなの年令にもなってないのに、よくもこむつかしいことをいうな!さあ、今すぐその僧房へ入れ。きたえてやる!・・・・」 オジエ・ド・ボーゼアンと名のるその少年は、かれをじっとみつめていた。ビロードのようなその瞳には、陰険さは微塵もな…

開かれん

787円には声も出ない。こんなすばらしい「音楽」がこんな価格で流通している世界をなんと名付ければよいのだろう。http://www.hmv.co.jp/product/detail/1783449 若きシフの音。陳腐であることを承知でそれでも瑞々しいと形容したくなる音のかがやきとかたち…

だが生き残るとは、何ものにも比して生き残ることなのか? 『バフォメット』第四章より

継ぎはぎの見本?

最近バタイユやクロソウスキーについてほんのすこし触れたりしているけれど、この二人は既存の権威に異を唱える異分子、たとえばキリスト教に対して批判の槍をともに投げつける盟友であった。しかし、その槍の投げ方が異なっており、「方法」のちがいはその…

肌、骨、あるいは

スペインの文化、たとえば闘牛というスペクタクルにバタイユが嗅ぎとった匂いとは正反対の薫りをバルトは摘みとる。 そして最終幕となる。牛のほうがまだ強い。しかし、牛が死を迎えるのは間違いない…。闘牛が人間に示すのは、なぜ人間のほうが優れているの…

首には紐のはしが

礼拝堂の床には、鎖かたびらや土や無数の毛のような繊維などがまざりあってできた七つのかたまりが、舗石をすっかりおおいつくしていた。そこには蜘蛛の巣が張り、けばだった草や無色の黴が生えていた。虱がいっぱいたかっているような銀白の玉虫色と、エメ…

ふいごの部屋

炉床では、青銅ノ蛇の下で火がはげしく燃えさかっている。その蛇が真っ白になるほど白熱したかと思うと、左側の労働修士が火箸でその尻尾をつかみ、ふいごの通風管にあてがう。金属製の蛇はゆっくりとからだをよじりはじめる。蛇体がヒビ割れ、さっと幾重に…

形而上学的ポルノグラフィーの

「ああ、われわれを永久に至高の『善』に釘づけしたと断言してはばからぬ『博士たち』の傲慢さよ!われわれの意志の目的が善だとしても、善の幻影はいやしい快楽ほどにはわれわれの心を奪いはしません!わたくしを満足させてくれるものは、神の御顔をけっし…

ゆらゆら帝国のボレロ

言葉は反復されるものに過ぎない。わたしが誰にも置き換えることのできないわたしであると同時に誰とでも交換可能なわたしであるように、わたしの記すどんな言葉もすでにある言葉の繰り返しにほかならず、あるいはこれからあるであろう言葉を先取りした反復…

空洞です

ぼくの心をあなたは奪い去った 俺は空洞 でかい空洞 全て残らずあなたは奪い去った 俺は空洞 面白い バカな子どもが ふざけて駆け抜ける 俺は空洞 でかい空洞 いいよ くぐりぬけてみな 穴の中 どうぞ 空洞 『空洞です』ゆらゆら帝国 より なにを着てでかけよ…