後期韻文詩
鳥たちも羊の群も村の女もみな遠く、
生あたたかい緑色の午下りの靄のなかで、
はしばみの若木のとりまくヒースの生えた
荒地にしゃがんで、おれはなんだか飲んでいた。
あのうら若いオアーズの流れでおれに何が飲めた、
声もない楡の若木、花もつけぬ芝草、曇り空。
あのタロ芋のふくべからおれに何が吸いだせた?
味気ない、汗ばむような、何か金色の酒。
こうしておれはたぶん、宿屋のくだらぬ看板だった。
次いで嵐が起り、夕暮まで空の様相を変えた。
青い夜空のもとには暗鬱な国々が、湖が、
立ち並ぶ竿や柱が、船着場が見えた。
森の水はきよらかな砂のうえで消えていった、
風が、空から、氷塊を沼に投げこんでいた・・・
ところでだ!おれは、黄金や貝をとる者のように、
飲もうなどという気持はけしとんでいた!
『ランボオ全作品集』(粟津則雄訳、思潮社)より
生あたたかい緑色の午下りの靄のなかで、
はしばみの若木のとりまくヒースの生えた
荒地にしゃがんで、おれはなんだか飲んでいた。
あのうら若いオアーズの流れでおれに何が飲めた、
声もない楡の若木、花もつけぬ芝草、曇り空。
あのタロ芋のふくべからおれに何が吸いだせた?
味気ない、汗ばむような、何か金色の酒。
こうしておれはたぶん、宿屋のくだらぬ看板だった。
次いで嵐が起り、夕暮まで空の様相を変えた。
青い夜空のもとには暗鬱な国々が、湖が、
立ち並ぶ竿や柱が、船着場が見えた。
森の水はきよらかな砂のうえで消えていった、
風が、空から、氷塊を沼に投げこんでいた・・・
ところでだ!おれは、黄金や貝をとる者のように、
飲もうなどという気持はけしとんでいた!
『ランボオ全作品集』(粟津則雄訳、思潮社)より