それだけのこと

 時は逝く


時は逝く、赤き蒸汽の船腹の過ぎゆくごとく、
穀倉の夕日のほめき、
黒猫の美しき耳鳴のごと、
時は逝く、何時しらず、柔かに陰影してぞゆく。
時は逝く、赤き蒸汽の船腹の過ぎゆくごとく。


北原白秋
『現代詩の鑑賞(上)』伊藤信吉(新潮文庫)より





ただそれだけのこと
それだけのこと
ただそれだけ
それだけ