主題歌を唄う

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クリント・イーストウッド主演の映画を10本以上撮影するブルース・サーティースの撮る「センチメンタル・アドベンチャー」はイーストウッドの傑作のひとつなのに、全国ロードショーされなかったことや地味な内容から今も陽の目を見ない作品のまま映画史に埋もれている。
映画館で映画をみることがなくなってしまって、映画について口にすることも滅多にないけれど、伝説のブルースシンガー&ギタリストのロバート・リロイ・ジョンソンの未収録曲を巡るロードムービー「CROSS ROADS 」のサウンドトラック盤(ライ・クーダープロデュース)を聴いていたら、なぜだかこの映画を思い出してしまったのでまたぞろ禁を破って書いている。
イーストウッド&サーティースの傑作と言えば、もちろん一番に挙がるのは「The Outlaw Josey Wales」だけれど、この「Honkytonk Man」(センチメンタル・アドベンチャー)がまたすばらしい。
映画というものが、感動や共感、人生への指針や批評、励ましと言ったものをもたらす一歩手前で、得体の知れぬ未体験への誘いであり、あられもない姿態を前にしての生々しさへの畏れに他ならないことをこの作品は思い出させてくれる。
何かを受け取るのではなく、体験のただなかに立つ、と言えばいいだろうか。答えなんかあってたまるか、ということだ。
ちなみにイーストウッドが歌うこの映画の主題歌はゴールデンラズベリー賞の最低主題歌賞にノミネートされたとのこと。人生という体験はどんなに上手に歌ってみせても所詮どれも下手くそな主題歌にすぎないということなのだろうか。
それにしてもMarty Robbins が渋い。脇役を光らせるイーストウッドのいつもの敬愛だ。