フーガはつづくよフーガはつ

27・27・27・念には念を
 ある日の正午頃、わたしはほぼ満員のS系統のバスに乗った。ほぼ満員のS系統の
バスには、かなり滑稽なひとりの若者が乗っていた。わたしは彼と同じバスに乗り合わせ
たわけだが、わたしが正午頃乗ったこのほぼ満員のS系統のバスにわたしより前に乗り込
んでいたこの若者は、頭のうえに帽子をかぶっていた。わたしはその帽子をひどく滑稽だ
と思った。ある日の正午頃S系統のバスでたまたまこの若者といっしょになったわたし
は、その若者がかぶっている帽子がひどく滑稽だと思ったのである。(以下略)


昨日の夜に引用した『文体練習』 レーモン・クノー/朝比奈弘治訳 (朝日出版社)より