ふいごの部屋

 炉床では、青銅ノ蛇の下で火がはげしく燃えさかっている。その蛇が真っ白になるほど白熱したかと思うと、左側の労働修士が火箸でその尻尾をつかみ、ふいごの通風管にあてがう。金属製の蛇はゆっくりとからだをよじりはじめる。蛇体がヒビ割れ、さっと幾重にもまるくなって波打ちながら、不明瞭な呻き声を全身に走らせる。それからとぐろを三重、二重と解き、ついにうつろな白熱した頭をもたげる。なかば開いたその口から、ヒューッと空気を切る長い音が洩れてくる。
「わたくしは咽喉が渇いたの!・・・」
 と騎士長が通訳した。


『バフォメット』第二章より