「では、このグリーンのは」と彼は言う。「お気に召しませんか?」
「ええ、駄目ですね」
「こちらの色はお客様によくお似合いです」
「ええ」とぼくは言う。「でも、欲しいのとちがうんです」
「どこか、ご不満でも?」
「いや別に。要するに、そんなに好きになれないんです。ブルーが似合うことはわかってるんですが。
でも、これとちがう色にしたいんです」
「そうですか。それでは、このグリーンのをお試しください!」
「似合わないんで・・・。すみませんが、もう少し考えてみます・・・」
『六つの本心の話』「ときめきの午後」(
早川書房)より