行方知れずの船となり、

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いったい何処へおもむこうとしているのか、わからぬままに魅了し、またみずからも途方にくれながら流れゆき、ときに座礁し暗雲を見つめ、ときに見知らぬ港に停留し不味い酒と年増の女を抱き、そうして半ば舵の壊れた航跡の果てに行方知れずの船となり、それでもひとびとの記憶の河を遡行する船としてお前は難破しつづけるだろうか。生きつづけながら消えつづける声と音とリズムの線分。あらかじめ設えられた軌道を走るオートモービルの車輪の下で、お前は今もやはり何処へおもむくということもなくただ遡行しているのだろうか。苛立つことはないか。消沈することはないか。せせら笑うことはないか。軽蔑することはないか。ないんだろうな、きっとね。そうだろ、お前あるいはお前たち。