彼方へ

「3安」幻想からの目覚め03

今考えるべきことは、政治的な思惑や経済的利害関係を超えた、全世界と自国の将来を見据えた上でのエネルギーのベストミックスの短~長期的な戦略だろう。 現経団連会長の発言は日本の経済を担うトップの発言としてはあまりにも短慮で恥ずかしいものだ。我々…

「3安」幻想からの目覚め02

日本の首相の「脱原発」発言がさまざまに云々されているが、先の話から言えば「脱原発」という言い方はもはやあり得ないのだ。 ある年代の者にしか通じないが、原発はフクシマ以前から「お前はすでに死んでいる」という状況にあった。にもかかわらず、二酸化…

「3安」幻想からの目覚め01

原子力発電は使用済み燃料をリサイクルできる唯一の発電方法だと、あたかも原子力発電もまたエコな発電だと言わんばかりに推進派は胸を張るが、肝心のリサイクル施設である核燃料の再処理施設の稼働およびプルサーマル計画は今もってメドが立っていないし、…

「3安」幻想からの目覚め00

ひとはどうしたものか幻想を好む。 よく自然エネルギーのコストはまだまた高く、原子力発電のコストはそれに比べれば安価だと言われ、それに加えて化石燃料のように相場の急騰に左右されないこと、原子力にある程度依存することは輸入燃料の依存度を高くしな…

気むずかしい恋人

二十もある羽根蒲団の上に、あやまって薔薇の花びらが一ひら落ちていてさえ気に病んだというあのペルシャの王子のように、彼女もまた、 Joseph Kessel 「懶惰の賦」より

くりかえし

年末から今までに同じ病気で三回も入院した。その二回目の入院のときにプランクトンの記事を書き、三回目の入院では今こうしてまだベッドの上にいて書いているのだが、とりたてて書きたいことはない。 まあひとつあげるなら西にみえる空の彼方が気になるくら…

プランクトンの夢は夢となりて

「千年に一回の確率なら今ある原発は大丈夫だろう。だけど近くにあるのはやだな。」 そう、やっぱりみんないやなのだ。いやならいやと言えばいい。 だから、早くなくしてしまうのが一番いいのだ。 そのための努力は国と電力会社だけでなく、まず「わたし」が…

プランクトンの夢は欲望となりて

ずいぶん前にベストセラーになった「東京に原発を」の言説は今でも正しいと言うべきだろう。 原発を新たには建造するのには反対だが、今ある原発を停止するわけにはいかない、今ある原発でなんとかしている間に代替エネルギーを準備をという、一見すると物分…

プランクトンの夢は藻屑となりて

なぜなら、化石燃料はいつか無くなるのだから。 だから原発が必要? ふつうの頭で考えればすぐ判ることだが、原発を造ったり維持したりするには膨大な電力が必要で、原発の耐用年数を40年としたとき、原発が産みだす電力から原発が「食う」電力を差し引いた…

プランクトンの夢は地層となりて

あまりに多くの者が慢性の健忘症に罹って久しいこの国の民は遠くない未来に原発のもたらす不安や恐怖など忘れてしまうだろう。その記憶の風化を電力会社は以前と同じやり方で後押しするだろう。 確かに代替エネルギーが今の電力量をまかなうようになるには様…

僕たちと羊とマルメロと

見落とされたまま枝にぶらさがるマルメロは揺れる それから 夜GPSの破片が流れる 朝羊が消える 昼泥棒と市民が影踏みしながら通りすぎる 酸っぱい雨に濡れ 奇形の鳥に脅かされ キンユーの空っぽの背中にすり寄られ お前は 恐れ慌てる手前で 宙ぶらりんに…

緑色の地

ここだけは緑なす静穏の地

ゆらゆら

ゆらゆら帝国が解散した。今の時代はわたしにとって「すの入った」ような時代だけれど、そこにまたひとつ「す」が入ってしまった。そんなことはもう珍しいことではないから今さら悲しんだりしないけれど、鼻歌で「空洞です」のなかの曲のひとつでも歌ってみ…

去りゆく季節に

小田事の勢能山の歌一首 真木の葉のしなふ背の山しのはずてわが越え行けば木の葉知りけむ 『万葉集』巻第三 二九一 「万葉集 (上)」(旺文社文庫)より

やくもたつ

いろいろといいたいことはあるけれど まざりあってもにごるだけ それよりなんでもないような はなすまでもないような ことでもひとつふたつなり につめることもないままに はしりがきしてはしりさる ふりしたふりしてふりかえり しゅーまんあたりのふれーず…

works

CDを買うのはいつ以来だろう。HMVでの履歴だと3年ぶりということになる。たぶんそうだろう。もしかするとオークションで何点か買っているかもしれないが。 今回は下記のCDを購入。 マイケルは亡くなったからというよりはあってもいいかな?というか…

よい休暇を

決して消えてなくなったわけではないだろう。それはそこにあったときの希薄な装いをただくりかえしているだけだ。春のセーターをTシャツに着替えるように。そうしてバカンスへでもでかけるように。 ロメールは何にむかって愛を囁きつづけたのだろうか。きっ…

大つごもりより雪

大つごもりより雪。ひと足先に 春の野に霧立ち渡り降る雪と人の見るまで梅の花散る 『万葉集』巻五 八三九 「新訓 万葉集」(岩波文庫)より

蝶のことば

日高敏隆氏が亡くなる。好奇心と自由な感性、そして柔軟な思考で動物の行動を探究してきた彼のことを、やはり先ごろ亡くなったレヴィ=ストロースが知の巨人と呼ばれるのなら、わたしはなんと呼ぼう。 「犬のことば」という本が日高氏との最初の出会いだが、…

秋の田の穂向きの寄れる片寄りに君に寄りなな言痛くありとも 但馬皇女 万葉集 第巻二 一一四

たいふう

たいふうがくると しょっちゅうていでんになった いまかいまかとまちつづけていても それでもやっぱり それまでさわいでいたてれびや やみよからぽっかりうかんでいたへやが きゅうにくらくなったりすると やっぱりあわててしまって だけどもなんだかきゅう…

目には見て手には取らえぬ月の内の楓のごとき妹をいかにせむ 万葉集 巻第四 六三二

夏相聞

大伴家持、紀女郎に贈れる歌一首 なでしこは咲きて散りぬと人は言へどわが標めし野の花にあらめやも 万葉集 巻八 一五一〇 「新訓 万葉集 上巻」(岩波文庫)より

衛星の影

忘れたい 忘れない 永遠の周回 宇宙へと解放されることもなく 地上へと舞いもどることもなく 恒星のあかるさを反射させながら まわる うたう ねむる 金属製の記憶 負傷したこども そよ風 油田 溶けていく氷河 さよなら 燃える 美しく 燃える きみ おれ ぼく …

ゆっくり

ゆっくり ゆっくり あまぐもきえて さわさわ さわさわ はっぱがゆれて むふむふ むふむふ みるくをのんで すやすや すやすや ともにねむりて ゆったり ゆったり てあしをのばし すたすた すたすた ろうかあるいて ゆっくり ゆっくり おうちにかえろう ゆっく…

すべての〈知〉は、絶対という観点から見れば方法論である。だから、明確に方 法的なものに対するもの怖じは無用である。方法的なものは器であって、唯一者の 外側にあるすべて、それ以上のなにものでもない。 F・カフカ「ノートG」(『夢・アフォリズム・…

夢の中の・・・

私がこう云った時、背の高い彼は自然と私の前に委縮して小さくなるような感じがしました。 彼はいつも話す通り頗る強情な男でしたけれども、一方では又人一倍の正直者でしたから、自分 の矛盾などをひどく非難される場合には、決して平気でいられない質だっ…

おへそ

男は、いちいちびつくりしてみせ、 ばかみたいに上ずつた声で、言ふ。 「これがおへそといふものかい」 てめへだつてもつてゐるくせに。 金子光晴「愛情13」『愛情69』(岩波文庫)より

待つということ

八蔵 何の話してるだ。 船長 五助を喰べる話だ。 八蔵 ……やっぱ、その話か。早く海へ流さねえからいけねえだ。 西川 八蔵、おめえ、こったら話聴いても驚かねえのか。 八蔵 ……驚きてえんだが驚けねえのさ。なぜ驚けねえのかと、不思議でたまんねえけど驚けね…

行方知れずの船となり、

いったい何処へおもむこうとしているのか、わからぬままに魅了し、またみずからも途方にくれながら流れゆき、ときに座礁し暗雲を見つめ、ときに見知らぬ港に停留し不味い酒と年増の女を抱き、そうして半ば舵の壊れた航跡の果てに行方知れずの船となり、それ…